「トークショー
田中登 vs 中川梨絵」
阿佐ヶ谷ラピュタ 平成18年4月29日
●自由席 本篇上映前
満席 52人
午後9時〜午後9時35分
「(秘)女郎責め地獄」を撮った田中登監督は
この席で33年振りに主演女優の中川梨絵に会ったという。
そのトークショーが本編の上映前に行なわれた。
阿佐ヶ谷ラピュタの「田中登の官能美学」特集である。
この映画は1973年の作品である。
庵主はそれを同時代に見ている。
そして今ではもうストーリーの細部は忘れているものの、
一箇所だけ記憶に残っている場面がある。
庵主が見たロマンボルノは数多いから
そのほとんどは題名もストーリーはおろか
どんな場面があったかも覚えていないが、
いくつかの映画は場面の記憶が残っているものがある。
この映画は数少ない強い印象を残した一本なのである。
名作との声価がある作品である。
今回ラピュタで上映されるということで、
庵主もその映画とは33年振りの再会ということになる。
撮影が高村倉太郎だという。
川島雄三監督の「幕末太陽伝」を撮った人である。
田中登の話によると
この映画では黒の美しさを要求したという。
それを見事に表現してくれたといっていた。
庵主は大映映画の画面の美しさには感心しているが、
ロマンポルノにそれを感じたことはなかった。
そこまで目がいっていなかったということである。
そう聞かされてから見た本篇は見応えのある映像だった。
「男たちの大和」を庵主は音楽の久石譲の映画だと思った。
この映画は中川梨絵の映画であることはもちろんだが、
それはまた高村倉太郎の映画だったのである。
そういう映画の見方を教えてくれるトークショーだった。
田中登と高村倉太郎の出会いは
長野県の大町(おおまち)の駅頭だったという。
監督がまだ高校生の頃だったという。
大町の駅で汽車から降りた時、
たまたま駅で映画の撮影をやっていたという。
その時のキャメラマンが後日この映画を撮ることになる
高村倉太郎だったのだという。
高村キャメラマンが亡くなってから
この映画が上映されることがあった。
そのときにお嬢さんと奥様が客席で
遺影をスクリーンに向けて見ていたという。
高村キャメラマンもこの映画には思い入れがあったのだろう。
詳細な撮影記録を文章にして残しているのだという。
その入魂の映像がこの映画には散りばめられている。
それを実現したスタッフを田中登は讃えるのである。
その魅力的な画面については
庵主が書いた「映画三昧」のこの映画の感想の中にくわしい。
それらはゾクゾクとくるような深みのある美しい画面である。
思わずうまいと唸らされる魅力的なカメラアングルなのである。
映画の魅力はやっぱりなんてったって女優さんの美しさである
田中登は中川梨絵の魅力をこう語る。
透明感がある女優だったという。
そしてはっきりした主張がある人だという。
その言葉を庵主が理解すると
気の強い女優さんだということである。
そして演じることに一途な女優であるということである。
画面の中で存在感を主張する強烈な個性だということである。
中川梨絵の
きりっとした感覚に合わせて
切れのいいセリフを書いたのだと
田中登はいう。
中川梨絵と田中登にはこういう話がある。
日活の田中登が東映京都で「神戸国際ギャング」を
撮った時のことである。
そのきっかけが中川梨絵だったという。
東映で撮影をしていた中川梨絵が
俊藤浩滋プロデューサーに
田中監督の「(秘)色情めす市場」はすごい映画だからと
それを見ることを勧めたのだという。
田中登の所に電話がかかってきたという。
「俊藤ですが、映画を一本撮ってくれませんか」。
俊藤と聞いてもすぐ相手が分からなかったという。
田中登は日活の監督である、まだ若手である。
俊藤浩滋プロデューサーといえば
大物の製作者である。
まさかそういう人から電話がかかってくるとは
思ってもいなかったからである。
そして俊藤浩滋は若手監督の映画もきちんと見ていて
いいものをすぐ取り入れる感覚を持っていたということである。
電話で俊藤浩滋はいったという。
高倉健以下だれでも揃えますから撮ってください、と。
藤純子(現、富司純子)は俊藤浩滋の娘である。
東映が他社の監督を抜擢するということは異例なことである。
当然、京都では、田中登はかなりいじめられたことだろう。
田中登を東映で撮らせたのが中川梨絵の感覚だったのである。
中川梨絵の女優としての感覚は鋭敏である。
田中登が「(秘)色情めす市場」を撮った時のことである。
そのオールラッシュ上映を役員の前でやった時のことである。
ラッシュの上映時間はなんと2時間3分だったという。
なぜ、なんと、というかというと、
ロマンポルノの上映時間は70分内外なのである。
50分近いフィルムを切らなければならないということである。
無謀なラッシュである。
その役員だけのオールラッシュ上映の場で
映画が終わったら、
試写室の後ろの方で女の声のためいきが聞こえたという。
田中登は中川梨絵がもぐり込んでいたことがわかったという。
「(秘)色情めす市場」はそれだけ出来がいい映画だった。
中川梨絵はその映画には出演していないが、
それをきちんと捉えることができる女優なのである。
その映画の気合がまた俊藤浩滋を動かしたのである。
田中登はこの映画にも出ている絵沢萠子についても語っていた。
絵沢萠子がいるだけで撮影現場が引き締まるのだという。
絵沢萠子がいるだけでずいぶん助かったものだと述懐する。
脇役ではあるがそういうしぶい女優さんがいるのである。
田中登は日活ロマンポルノを振り返ってこういう。
1133本の作品を残したロマンボルノは愛の物語だったと。
それまでの映画のタブーを突き破った面白さが
ロマンポルノの魅力だったのだと。
「(秘)女郎責め地獄」は日活の撮影所仕事が堪能できる
いま見てもけっして古くはなっていない
映画にはまってしまった人にとっては悦楽の時間にひたれる
中川梨絵の存在感が長く印象に残る映画なのである。
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